領収書をもらうだけでは経費が落ちない!?インボイス制度?会社だけじゃない!フリーランス・副業でも大きな影響!?
経費が落ちない!!!?
って本当!?
答え:本当です。
台湾では、領収証代わりに「統一発票」というインボイスが使われますが、会社はある一手間がないと、領収書や請求書をもらうだけでは、税金の申告上、経費が落ちない、つまり費用とできず税金がより多く課せられてしまいます。
台湾では至って普通のことです。
そして、それが日本でも始まろうとしています。今回は、その仕組みを既に古くから運用されている台湾にて、誰でもわかるように解説します。
令和5年10月1日から日本でも始まるインボイス方式。
世界でも国際規格のインボイスが検討されるなど、世界が動き始めています。
- へ?インボイス制度って何?
- 自分には関係ないよね?
- インボイス制度への理解や準備は済んでいるか?
- 台湾では既にインボイス制度?統一発票というのが使われている?
会社でもフリーランスでも事業をやっている方、副業をやっている方、副業をやり始めようとしている方も、知らないでは済まされません!
実は、台湾ではもうずいぶん昔からインボイス方式が導入されています。
今後、日本でも、徐々に台湾と同じような仕組みに移行していくと思います(完全移行までは、多少時間はかかると思います…)。
さて、台湾のインボイス制度ですが、人々を楽しませる面白いからくり、しかし、脱税を防止する策もあって、とても勉強になります。奥が深いです!!!
先駆者である台湾の例を先取りして、日本の対応の流れを先取りしちゃいましょう!
台湾のインボイス制度の概要
インボイス方式の概要
台湾では、統一発票(「統一發票(Tǒngyī fà piào)」というインボイスを利用して、このインボイス方式が採用されています。
台湾に来たとき、とても画期的な制度と驚きました。
インボイス方式は…
- 適切に売上と仕入を管理
- 脱税や申告の漏洩を防ぐ機能
- 税務当局の税務調査の効率性に大きく貢献
といった特徴があります(以降、それぞれ解説します。とても秀逸な仕組みです)。
中身をちゃんと理解してみると、なんて日本がアナログだったんだと気づかされました。
そういう意味では、インボイス方式を採用している国に移住してわかりますが、今回日本がこのインボイス方式を導入するのは必然だったかもしれません。
今回は、統一発票によるインボイス方式の採用によって、税を課す仕組み、そして、電子発票による電子化という点を解説します。
今回、基本を理解し、さらに、台湾では一歩仕組みが進んでいますので、幅広い方を対象に、今回の記事は参考になると思います。
そもそも統一発票とは
統一発票(「統一發票(Tǒngyī fà piào)」とは、簡単に言うと政府にて定める様式に従ったインボイス・請求書またはレシート・領収書のことです。
台湾の会社や支店といった事業体は、設立時に税務当局に登録を行い、税籍番号(統一編號(Tǒngyī biānhào))が発行されます。
これによって、小規模会社や特定事業を除き、売り上げた時にはこの統一発票を用いて請求を行う必要があるということになります。
統一発票の主な目的は以下の通りです。
- インボイス・請求となる
- 営業税の納付基礎となる
- 法人税の申告にあたってのエビデンス・証憑となる ←脱税の防止
- 個人向けには宝くじ代わりとなる ←脱税の防止
統一発票の一つ目の目的は、インボイス・請求の書類であるということです。売り上げた後、代金を回収するためにインボイスや請求を行うのは台湾でも同様ですが、これを統一発票を用いて利用するということです。これは、モノの販売、サービスや役務の提供でも同様です。
会社が、統一発票を用いて請求をしない場合、販売した相手先は、「統一発票を発行してくれ」と言われます。なぜでしょうか?
これは、後述の2点、営業税と法人税が関係するためです。解説します。
営業税の納付方法
台湾における営業税は、日本でいう消費税に該当するものと理解してかまわないです。
営業税は、間接税の一種で、つまり、販売した側が、売り上げ代金を払う相手方の代わりに税金を収めます。納税者と納税義務者が一致してしないのが間接税です。
販売した側は、単に販売代金に含まれる営業税を納税するだけでなく、同様に、自身が仕入れた時や費用の支払いにあたって合わせて支払った営業税相当額を控除した金額との差額を申告納税することになります。
簡単な例で見てみよう
例 A社は、B社から80で仕入れて、C社に100で販売した場合
A社の営業税の申告納税額を見てみましょう。
この場合、A社もC社も購入にあたり営業税を負担しますが、販売側が代金に含まれる営業税も受け取って、購入者側に代わって納税することになります。
A社は、C社に販売し、C社から営業税が含めた代金を受け取ります。A社は、C社に代わって営業税を納付することになります。
A社には仕入れがあります。この時の営業税は、A社の仕入れ先B社が同じように申告納税することになります。このため、A社には既に仕入れ代金に含まれて払った営業税がありますので、この部分は、A社は既に営業税を払っているので控除できることになります。
①受け取った営業税5(100×5%)-②支払った営業税4(80×5%)=1
最終的にA社が申告納税する営業税は差額の1となります。
これが営業税の納付の仕組みです。
上記の通り、A社は、①販売税額から②仕入れ税額を控除して営業税を納付しますが、特に②の仕入れ税額を控除することが大事です。控除できなければ、先に払った営業税分、営業税額が大きくなってしまうからです。
この時、申告にあたり大事なのが「統一発票」です。
営業税の納税・申告で大事な統一発票
統一発票には、販売した側の会社番号と、仕入れた側の会社番号、両方記載されていることが必要です。
仕入れた側は、この統一発票をちゃんと入手してはじめて、上記の②仕入れ税額の控除を行うことができます。
これがインボイス制度の最も大事な仕組みです。
税金を控除する側(仕入れ側)は税金をちゃんと減らしたいので、統一発票をちゃんと受け取りたいと思います。
したがって、販売側はちゃんと統一発票を発行しなければなりません。
この時、販売側が、営業税を申告しない(つまり脱税、申告漏れとなった)場合、どうなると思いますか?
台湾の国税局は、仕入れた側で控除された営業税及びその統一発票が、その相手で対となるはずの販売者側でちゃんと納税されているかチェックをしています。
繰り返しになりますが、統一発票には、統一発票の番号とと共に、販売者側の会社番号と仕入れた側の会社番号が両方記載されています。したがって、両者は片方は販売税額と納税され、もう片方は仕入れ税額として控除され、対になっていないとおかしいのです。
統一発票のこれらの番号をキーに、販売と仕入れが対になっているかどうか、国税は容易にチェックすることができるわけです。
しっかり営業税を申告させ、かつ税務当局のチェックの鍵となっているのが「統一発票」とういことです。
つまり、統一発票をもらうだけではなく、購入者側も自身の会社番号を入れてもらう必要があり、そうでないと、会社の税務申告上、有効なエビデンスとなりません。
法人税のエビデンス・証憑/脱税の防止の効果
統一発票は、会社の利益にかかる税金の申告、つまり、法人税の申告でも重要な役割を果たします。
会社の利益の申告では、【売上額(収益)ー仕入額(費用)】×税率にて法人税が計算されます。
上記のA社の例で見てみましょう。
収益100-費用80=利益20
法人税額:利益(課税所得)20×台湾の法人税率20%=4
A社は、決算期末から5か月目に申告書上で計算された4を納税し申告することになります。
ここでも注目したいのが、法人税は、収益から、【費用を控除して】、利益を算出して、税額を計算する点です。
自分の収益から費用を控除できなければ、利益は大きくなり、結果として法人税額は大きくなります。つまり、適法に費用が費用として認められることが重要ということです。
台湾の法人税法においても、何が費用であるかは規定がありますが、この時重要なのは、適切なエビデンス・証憑(しょうひょう)がないと、法人税の計算において費用を認めませんという規定があることです。
この適切なエビデンス・証憑のうち、台湾で最も重要視されるのが「統一発票」です。
国税局は、営業税のチェックと同様、法人税の計算に反映された費用が、相手方、つまり販売側の収益として計上されているかチェックしています。つまり、脱税や申告が漏れていないかチェックしています。
この時、大事な役割を果たすのが、「統一発票」です。
再度繰り返しになりますが、統一発票には、取引番号と共に、販売者側と仕入れ者側の両方の番号が入っています。収益と費用、これが対になっていることは容易にチェックできるわけです。
つまり、販売者側の脱税・申告漏れが容易に判明する仕組みが、統一発票をもって構築されているのです。
個人向けには【宝くじ機能】を持たせて脱税防止!?
では、会社から個人に販売された場合はどうでしょうか。
個人には、会社番号がありませんので、販売側が、販売時に統一発票を起票した時、仕入れ側・購入者側の番号が入らないことになります。
ここで、台湾当局が作った仕組みが、購入者側の番号が入っていない統一発票には宝くじの機能を持たせたことです。
具体的には、購入者側の番号が入っていない統一発票は、2ヵ月に一度、当選番号が発表され、その当選番号が、統一発票の取引番号と一致すれば、賞金がもらえます。
当選金額は、200元から始まり、一等(特別奨)はなんと、1,000万元(約4,000万円)!!!これが2ヵ月に一回ですので、チャンスはある(!?)わけです。
統一発票の当選について
当選は、営業税の申告に合わせて2ヵ月に一度実施されます。
1・2月⇒3月25日、3・4月⇒5月25日……といった感じです。
当選番号は台湾財政部ホームページ等で確認することができます。
2021年7月・8月の当選結果
台湾居住者であれば、外国人であっても居留証を持って当選金を受け取ることができます!換金は、5`等(1,000元)まではコンビニで実施でき、以降、高額当選については指定された金融機関(第一銀行、彰化銀行、全國農業金庫、農(漁)會信用部、及び信用合作社)で換金できます。
これであなたも、台湾のコンビニ等で買い物をして大金を手に入れるチャンスも!
※3等(1万元:約4万円)以上については、20%の源泉徴収があります。
これは、個人的に非常に秀逸な仕組みだなと思います。
個人の方も、企業から日々たくさんモノを購入します。例えば、コンビニエンスストアーで買い物、ユニクロで買い物、ネットショッピング、などなど。日々個人も購入します。
この場合、個人であれば、統一発票に購入者番号が付与されませんが、2ヵ月に一度、宝くじの当選があるので、統一発票を保管する方が多いのです。
当選した統一発票は、高額でなければコンビニエンスストア、高額であれば銀行に持ち込まれ、換金されることになります。
さて、持ち込まれた統一発票はどうなるか?
はい、台湾税務当局に提出されることになります。
あとは、上記と同様、この持ち込まれた統一発票と対になる販売側の売上が、法人税、営業税としてちゃんと納税・申告されているか、チェックされるわけです。
統一発票に購入者側の番号が付与されないからといって、販売者側の脱税や申告漏れを防ぎたい。このため、購入者番号の付与されていない統一発票に宝くじ機能を持たせ、販売にあたりちゃんと統一発票が起票され、購入者側が、ちゃんと統一発票を管理する仕組みを、宝くじ機能を持たせることで、仕組化したのです。
どうでしょう。とても面白く、秀逸な仕組みではないですか?
個人向け統一発票の管理がさらに便利に!
「載具( Zài jù ザイジュー)」アプリをご存知ですか?
- 「載具( Zài jù ザイジュー)」とは、つまり、統一發票を紙で発行してもらわず、携帯のアプリ上にインプットしてもらう方法です。
- 上記の通り、台湾では、原則として、販売側に統一發票の発行が義務付けられています。この統一発票を紙で発行せずに、アプリ上で発行してもらう方法です。
購入側が個人の場合(統一番号を持たない場合)、この統一発票が宝くじ代わりになりますが、現在は、この「載具( Zài jù ザイジュー)」アプリによって、統一発票の管理と当選金額の確認が非常に便利となりました!
- いろいろなアプリが出ています。基本はこちらで確認してみましょう。
發票載具-手機載具手機輕鬆存發票 無紙環保愛地球
なお、個人では、買い物のお会計時に特に統一発票及び統一番号について、店員から聞かれます。買い物時の関連する中国語も合わせてこちらの記事「【台湾で中国語】これだけで買い物はマスター!【関連文化や慣習も】」で押さえてしまいましょう!
✅ 要載具? Yào zài jù?
- 日:「載具( Zài jù ザイジュー)」は必要ですか?
電子化(電子発票)の推進
統一発票は電子発票として、電子化が推進されています。多くの会社・業者で電子化が促進されていますが、まだ、浸透してない中小企業もあります。
基本的には電子化が義務化される方向で、2021年はいまだ移行期になっています。
統一発票の電子化…
つまり、販売者側が販売すると、国税のシステムに自動で販売情報及び仕入れ情報がインプットされる仕組みが構築されています。
つまり、国税は、販売と購買にかかる法人税・営業税がそれぞれちゃんと申告されているか、より容易にチェックする体制が構築され、法人税も営業税も網羅的に納税されるというわけです。
台湾の税務当局は、より効率的にマンパワーをかけずに税務調査・脱税調査を行う仕組みができているというわけです。これだけ聞くと、怖い・・・と思うかもしれませんが、無駄な税金をかけずに税務調査をしているとすれば聞こえは良いかもしれません。
まとめ
統一発票とインボイス制度まとめ
- 統一発票は、政府によって認められている公式なインボイス・請求書
- 統一発票は、営業税の申告の基礎となる
- 統一発票は、法人税の申告にあたっても重要なエビデンス・証憑となる
- 台湾の税務当局は、統一発票の取引番号・販売側の番号・購入側の番号をもって、法人税、営業税が収益・費用または販売税額・仕入れ控除税額として、それぞれ対になっているかチェックしている ←脱税・申告漏れの防止
- 統一発票をもらうだけでは、有効な税務上のエビデンスにならない!必ず購入者としての会社番号を入れてもらう必要がある。
- 購入者の番号が記載されない個人向け等の統一発票には、宝くじ機能を持たせている。一等は1,000万元で2ヵ月に一回当選。 宝くじとして持ち込まれた統一発票をもとに、同様に法人税と営業税の脱税・申告漏れの防止の役割を果たす。
- 昨今では、電子化が推進され、より効率的に統一発票が発行され管理されると共に、台湾税務当局のチェックも効果的・効率的に実施されるようになっている。
いかがだったでしょうか。
日本でも始まるインボイス制度。台湾の仕組みとは少し異なるところはあるでしょうが、仕組みは同じです。
台湾は古くからインボイス制度ですので、先行例として把握できると思います。
とても秀逸な仕組みだなと思います。
日本はどうか?
インボイス制度が導入される前まで、日本では税務当局がどのように脱税や税金逃れをチェックするかご存知でしょうか。
日本では、古くから反面調査という方法が主流です。つまり、購買者側の税務調査を行い、そこの費用から、販売者側の方も査察・チェックに入る方法です。日本は、まだインボイス方式ではなく、申告方式なので、自主的に収益や費用を申告するか否かにかかってくるわけで、チェックもこの中身を見る以外に方法がないのです。
従って、日本の税務当局の調査には、膨大な労力とその分の税務調査員のコストも発生します。冒頭、日本の仕組みがアナログと記載したのはこれが理由です。そして、そのコストって、何でまかなわれているか…… 日本の財政は非常に支出が多く債務が増えているのが特徴です。
他方で、今回、理解いただいたように、台湾でも用いられている統一発票によるインボイス制度は、とても効率的な税の管理が可能です。台湾では、このような支出も抑えられているわけです。
日本のインボイス制度の導入は財政赤字から見ますと必然だったのかもしれませんね。
なお、台湾の税金を包括的に概要を把握したい方はコチラの記事「【誰でもわかる台湾の税金】わかりやすく把握【移住・ビジネスでは必須】」が参考になります。
非常にシステマティックで効率的な税の管理がされている台湾。
人々の暮らしのために、ITやデジタルも駆使した政策も実行されています。
無駄のない政治、財政って重要ですよね。私はその点でも台湾を評価しています。
インボイス制度の先行事例としての確認、また、台湾移住を検討されている方にとっても大事な税金の要素なので、参考にしていただけたら幸いです。
今回は以上となります。最後までお読みいただきましてありがとうございました。
【海外移住を検討するにあたって、その国の情報を把握することはとても大事】
そのうち、税金は肝ともなります。
統一発票も、台湾で生活するには欠かせないものです。
統一発票を理解して、台湾の効率的な税の管理と仕組みを理解したところで、システマティックな台湾への移住も考えてみてはいかがでしょうか。台湾移住にはたくさんの良いところ(【2021年版 海外移住-台湾】メリット)がありますし、台湾でお買い物をして統一発票で大金もGETも面白いですね。
こちらの記事「【海外移住先選びに絶対必要】おすすめは自分の中に【私はこうして台湾を選んだ】」は、海外移住を少しでも思い立った時にオススメです~^^
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